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2012/10/08

方言の話(解決済み)

某ライトノベルを読んでいて、どうしても気になる言い回しがあったのでここで紹介しておきます
ちなみに、某所で意見を募り議論し既に解決済みであります

問題の文章表現
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赤線で示した「言わしてもらう」という言葉遣い。これは果たして正しい表現なのかということが今回の論点です
結論から言うと、この文は
言わ(ワ行五段活用動詞『言う』の未然形)(使役の助動詞『(さ)せる』の連用形)(接続助詞)もらう(受益表現)
と品詞分解されるべきであるため、本来は「言わせてもらう」でなければなりません。しかしここでは「言わてもらう」となっていて、違和感があります

晒し上げ
この問題を某所に投げかけたところ、以下の様な意見を得ることができました
言わす サ行五段活用
言わさず
言わして
言わす
言わすこと
言わせば
言わせ
言わそう
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
×言わせる
○言わす
×させる
○さす
しかしこれは誤りです。これを述べた人はドヤ顔で返答し、ぼくを馬鹿呼ばわりしました
まず「言わす」ではなく「言う」ですから、そもそもおかしいですね。頭の悪さが伺えます。さらに「×させる、○さす」という部分。これは古文の世界ならばその通りですが、この文章はどう見ても現代日本語(さらに言うと狭義での口語表現)で書かれています。なので「させる」が正しいのです。「言う」に関しても古文ならばハ行四段活用動詞になりますね
あまりにも自信満々に言っておられていたものですから、ここで晒しあげておきました

方言という存在
では何故「言わしてもらう」という誤った文章がこうして校正を逃れるに至ったのでしょうか。普通であれば編集担当者が文章のチェックをし、必要であれば校正をするはずです(ライトノベル業界は著者も編集もバカだから仕方ないという意見もありましたがここでは度外視します)。ぼくは不本意にも「言わしてもらう」という言葉遣いが正しいのではないのか?という仮定を立てるのでした

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Googleで「言わせて」と「言わして」を検索します。すると、わずかに「言わしてもらう」関連の記事がヒットするのです

更にGoogleで検索を続けていると、以下の記事を発見
http://www2.nkansai.ne.jp/users/ytaniguchi/jodoushi.htm

f.使役助動詞の連用形「~し」、「~さし」
使役助動詞の「~せる」「~させる」の連用形が、それぞれ「~し」「~さし」となる。共通語では「~せ」「~させ」である。
��例9>使役助動詞の連用形「~し」「~さし」の用例
喜ばせる 母の日のプレゼントで、お母さんを喜ばした。(喜ばせた)
読ませる 先生、上手に読むしけー、僕に教科書の30ページを読ましてください。(読ませてください)
開けさせる 浩志君は力があるしけー、彼にこのビンの蓋を開けさした。(開けさせた)
来させる 木村さんがおらんと宴会が盛りあがらんしけー、彼に来さしてほしわ。(来させて)
寝させる ちょっと、静かにしてーな。疲れとるしけー、静かに寝さして。(寝させて)
見させる ええテレビの番組だったで、子どもらーにも見さした。(見させた)
なんと、但馬地方に上記のような方言があるということがわかりました。どうやらこれに拠ると、「させる」という使役の助動詞は「さし」というものに姿を変えるようです。つまり、件の「言わしてもらう」という表現はこの地域においては誤りではないのです

言語の変化
言語とは、時代を経てその意味や使い方を変化させることがあるものです。「確信犯」の本来の意味、「役不足」の使われ方、「全然~(肯定表現)」などなど……

上記のような日本語の誤用、ら抜き言葉に始まる極端すぎる口語表現は個人的には大嫌いです。「伝わればいい」という姿勢をぼくは認めません。それ以前に「間違っていることに気付いていない」「正しい使い方を知らない」「何がいけないのかわからない」といった人も居るような気がしてなりません。ごく自然に口から「これ食べれる?」とか、聞いていて呆れてしまいます

時代の変化とともに言葉が移り変わることは決して悪いことではないとは思いますが、明らかに間違っているような使い方は避けるべきだと思います

今回ぼくが取り上げた「言わしてもらう」という言葉遣いは、方言であるため正しい表現の一種であり誤りではないという形で結論としますが、相手に何かを伝える際には日本語の使い方には十分に気をつけたいですね

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