中学高校と学びの場が同じだったSのことがぼくはずっと好きでした。高校受験のとき、同じ高校を受けると知って心の内で喜んでいたことを覚えています。わざわざぼくと同じ高校を選んだのかとさえ思うほどに脳内は既に麻痺して、自惚れていたのですね。合格発表の日、高校正門にてSの姿を発見すると同時に向こうもこちらを見つけたらしく近づいてきてはにかむS。お互い安堵の表情を浮かべながら他愛ない会話をしている時にTが近寄って来たときには、我が友人ながら彼を少し邪魔に感じたりもしました。
さて、しかしながら彼女とは高校では同じクラスにはなれず、結局同じ教室で勉強をしたのは中学1年の時だけ。今思うと切ないです。告白する勇気も機会もなく、時間は過ぎていくだけでした。このままでは後悔すると思い高3の秋、ぼくはSにその思いを伝えました。結果はお察しください。たしか『好きな人は居ない、勉強に専念したい、友達のままでいよう』というのが彼女の返答でした。
今彼女がどこで何をしているのかはわかりません。容姿も性格も言動も可愛いですからきっとぼくなんかよりも良いパートナーが居ることと思います(思いたくありませんが)。いまだに切ないし苦しいし悔しいです。でもあの時告白していなかったら今なおもやもやが晴れずにいたと思います。もし告白せずに今まで生きてきたとしたら、『あの時告白していたらきっと結ばれていただろうね。告白しておけばよかったよ』などと戯言を吐いていたことでしょう。そう考えると、当時のぼくは正しい選択肢を選んだのだと自信をもって言えます。
そしてぼくはいまもずっとSのことが好きです。これからもこの気持ちが変わることは無いでしょう。
以上、ぼくが恋人を作らない理由です。
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